講演後によくアンケートをいただきます。


たまに、




  質問があればアンケートに書いてください


  なんでも結構です


  必ず返事します!




ということをやります。


そんなやりとりの紹介…


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Q:「話す力と書く力はどうすれば身につくか?」




私は結構、この2つの力へのこだわりを持っています。


きっかけは


ある新入社員研修を頼まれたときのことです。




「これからビジネス社会を生き抜いていく新人に必要なスキルは何だろう?」




と考えたことでした。


これからは転職、リストラは当たり前の時代です。


ではどうしたらいいのか?


その答えが「話す力と書く力」という2つのスキルを磨くこと。


これは携帯電話と同じように持ち運びが可能です。


身に備わっ能力、ポータブルスキルといえましょう。




仮に転職して全く違う業種に就いたとしても


「話す力と書く力」さえあれば


新しい商品知識を学び、


それを話し、書けばいいわけです。




そのうち思ったのです。




「これは学校時代から意識したほうがいいだろう」




と。


それから機会あるたびに


「話す力と書く力」の必要性を訴えてきました。


それに対する質問が冒頭の「どうすれば…?」という問いでした。


私は次のように答えました。






質問ありがとうございます。

「話す力と書く力はどうすれば身につくか?」ということですね。

お答えします。




まずは2つの力の大前提について。

これは講演でお話しました。

自分自身に対して




「どうせ…」

「そんなこといったって…」




という悲観的なつぶやきがたくさんある限り、

「話す」ことも「書く」こともなかなかうまくいかないかもしれません。


「読む」「聞く」という行為が受け身の姿勢でよいのとは反対に、

「話す」と「書く」はこちらから行動を起こさねばなりません。

自分の考えが悲観的だと




「どうせこんなこと話したって…」

「どうせうまく書けっこないんだ…」




となり、行動に移せないでしょう。


あなたはまず、




「つぶやきの習慣を変えること」

「その努力を習慣に変えること」




からスタートしてください。

「話す力」「書く力」とは究極のところ「慣れ」です。

経験を積むこと。

よく話すこと、よく書くことなのです。

だからそもそものマインドが弱いと経験を積めません。

ぜひ「つぶやきの習慣」を変えてみてください。




さてその上で、練習方法です。

まずは「話す力」ですが、私は次の2つをすすめます。




1.まずは「聞く」

2.詩の朗読




最初にすべきことは「聞く」こと。

話すことが上手な人、

「あの人みたいに話せたらなあ」という人を見つけて、

その人の話を「意識して」くり返し聞くことです。

漫然と聞かず、

「意識して」聞く。




その際、




「なぜこの人は話がうまいのか?」

「どこがいいのか?」




と自分に問いかけながらくり返し聞くことです。


それには有名人がいいです。

いわゆる噺家(はなしか)です。

私は三遊亭歌之助という落語家のCDをIpodにいれてくり返し聞きました。




くり返し聞くうちに、

話のリズム、間合い、テンポなどが知らず知らず身につきます。

「同じものをくり返す」ことがポイントです。

ぜひあなたにあったものを探してみてください。




次に詩の朗読。

必ず声を出す。

もちろん小説でも構いません。

お気に入りのフレーズをくり返し声に出してください。




私は中学生や高校生の頃、

家に帰るとまず教科書を音読しました。

眠気も覚めるし、

あまり頭を使わないのでとっかかりにいいですね。




そして「詩」。

詩にはリズムがあります。

できれば文語体の詩がいいです。

私は島崎藤村とか室生犀星の詩を暗誦しました。

今でも覚えています。

口語体より文語体の方が、

韻を踏んでいるのでリズム感がいいのです。




詩の解釈や意味は無視して構いません。

耳から入ってくる日本語の感触を楽しんでください。

好きな詩集が見つかる頃には、

きっと話し方の基本ができてきます。




さてその上で、

人前で実際に話さねばなりません。

これには勇気が必要です。

クラス全員の前で発言することは大変なことです。

だからまず、

先生に個人的に質問に行きましょう。

わからないところを聞きにいくのです。

自分の中ではどこまでがわかり、

どこからがわからないか、

明確にしてからいってください。

そうでなければ先生に失礼です。


まずは1対1のコミュニケーションからスタートします。

あなたの好きな先生ならばきっと好意的に質問に答えてくれるでしょうし、

なにより、その勉強の理解が深まります。一石二鳥です。




そうして慣れてきたら、

クラスの中で発言する機会を待ちましょう。

複数の人の前で話すことは「慣れ」です。

「場数」です。

私は全国5万人以上の人たちに講演してきましたが、

慣れるまで(特に100回やるまで!)は前日眠れない日もありました。

そんなときは自己暗示をかけます。




「お前は『それ』にふさわしい、お前は『それ』に値する」




こうした呪文を鏡を見ながらやりましたね。

フジテレビの「とくダネ!」の本番前も、控え室で一生懸命やりました。




では次の「書く力」。

これは一人で黙ってできるので「話す」ことより簡単ですね。




1.日記をつける(匿名ブログでもいい)

2.好きな小説家をみつける

3.新聞のコラム(天声人語など)をノートに毎日書き写す




まずは1から。

とにかく書きましょう。

短くてもいいから、まずは一文。

次に二文、そして三文。

だんだん増やしていきます。




さてここで質問です。

最初の一文は何のためにあると思いますか?

少し考えてみてください。

答えは…
































「次の第二文を読ませるため」




にあります!

そして第二文は第三文を読ませるため。

さらに…。

こうして文章は出来上がります。

まずはペンを持ってみましょう。




2つ目は好きな小説家を見つけること。

暇な時間を作って図書館へ行きます。

いろいろな作家の本を手にします。

その人の文体、ものの見方、人生観など、

自分と相性の合う、納得できる作家を見つけたらしめたものです。

その人の作品だけを読みます。

他の作家は放っておきましょう。

その作家が書いたものの中でも、

特に気に入った小説はさらにくり返し読みます。

気に入ったところだけをくり返し読みます。

さらにさらに、

気に入った部分をノートに書き写します。




  ところで話はややそれますが、

  もし可能ならば、

  小説以外に発表された随筆なども読みます。

  手紙文も読みます。

  さらにその人に関する評論も…。

  そうすると、

  一人の作家の目を通して人生というものを垣間見ることができます。

  1つの座標軸があなたの中にできあがるのです。

  もちろん、その座標軸は借り物です。

  あなた自身のオリジナルの座標軸を作らなければなりませんが、

  まずは、先達の軸を参考にする。

  究極のメンターですね。




実は多くの文筆家は人の文章を書き写すということをしています。

自分の尊敬する作家の文章を、実際に手で書き写すのです。

頭ではなく、手に記憶させます。

宮城谷昌光という歴史小説家は、

古代中国を舞台にした小説を書くにあたり、

あの、膨大な歴史書司馬遷の「史記」をすべて書き写したといいます。

行間から歴史が浮き上がってきた、といいます。




そうした意味で、3番目の新聞のコラムは、

好きな作家が見つからない場合やってほしいことです。

まず、A4の大学ノートを1冊用意します。

それを横にします。

ページの上に新聞の切り抜きをのりで貼り付け、

その下に文章を書き写します。

一字一句違わず、厳密に写します。

これを毎日100日くり返します。

やっているうちにきっと何かが変わってきます。

漢字も覚えるし、

何よりも書いてある内容について書きながら考えるようになるでしょう。

思考が深まりまるのです。


100日くり返したら、

その新聞コラムにタイトルをつけましょう。

新聞コラムにはタイトルがありません。

あなたが好きにつけていいのです。

ただし、14文字以内で。

これは考える訓練としては最適です。

書き写すことが気持ちよかったら、

100日を超えてやってみてください。




(以上)