私が最初に高校生に講演したのが


今から約15年前。


大変な教育困難校だった。


講演依頼が来たのが3日前。


きっと誰かに断られたのだろう。




そのときの私


製薬会社の営業から転職したばかり。


ドクターや薬剤師へのスピーチ経験はあった。


高校生も似たようなものだろう、と


気軽に引き受けてしまった。




それがもう、大失敗。


非常な屈辱と悔しさ、そして無力感。


それに加えて


講演後の控え室で


担当の先生からのキツイ一言。




「トリイさん、あまり講演、慣れてないみたいですね…」




さりげなく語られたそのセリフは


傷ついた私の心の傷に塩をぬった。




重い足取りで高校を後にした。


この失敗はいつか取り返さなければならない。


いつか、あの先生に目にモノみせてやる…




とまあ、


本当のところを書くとこのようになる。


あのときのA先生は今いずこ。


おかげさまで


一応、全国どこでも講演できるスキルが身についた。


今ではA先生に感謝している。




それにしても


このときの傷は大きく、深く


数年前に


講演依頼が殺到したとき


私はいろいろな人に講演のコツを聞いて回った。


で、みなさんが言った共通点、それは




バカズ




だった。


そう、場数である。


数をこなすしかない、というわけだ。




そのときは


「もっと速効性のあるアドバイスはないの?」


と思ったが


今にして思えばそのとおりだ。


私も質問されたら同じように答えるだろう。


場数だ、と。




しかしテクニック的なものも存在する。


特に高校生はなかなか難しい聴衆である。


体育館に大勢集めて講演するには




テレビ型プレゼン




が効果的だろう。


すなわち、


プロジェクターやスピーカーを使い


PowerPointフル稼働で


五感に訴えるプレゼンをする。


実はテレビほど見慣れているものはない。


私の先生はある意味、


みのもんた(?)なのだ?????




1.自己紹介や前置きなど「絶対に」しない:いきなりはじめる

2.話のスタートはビデオか写真を出す

3.3択クイズを無理やりにでも作る(「起承転結」ではなく「ミステリー」)

4.クイズ解答用紙を配っておき、記入させ、手を上げさせる

5.手を上げてくれたらほめる

6.講演の内容は話したいと思ったことの半分か2/3に縮める




まず1。


実は生徒の方が「講演慣れ」している。

彼らは「聞くプロ」。

お金(授業料)を払って講演を聞いている。

この認識が必要だ。




だから講演前の状態とは実は生徒側が優勢なのだ。

「さあ、今日の講師はどんな奴かな…」と構えている。

その主導権を


一気にこちらに取り戻す方法が「1」である。

いきなり本題に入ることで


相手の意表をつく。

まさか最初から本題が始まるとは思ってもいないからだ。



続いて2。


講演のテーマにあわせて

それに関係するニュース番組などの映像を2,3分流すのもいい。

映像はとりあえず見てしまう。


見ないまでも聞いてしまう。

映像を流している間に


こちらの体制(心の準備)を整えることもできる。




講演というものは

とにかく最初の第一声が緊張する。


その第一声をいつも




「最初にこの映像をご覧下さい」




といってから一息つけるのは救いとなるだろう。

当初私も


ずいぶんこれで落ち着けましたね。




適当な映像が見つからなかった場合は


写真でいい。


人物の写真はいい。


人はとりあえず「目」を見てしまう。


アイ・キャッチに最適だ。


私はよくマザー・テレサを使わせていただく。




3。

「起承転結」ではなく「ミステリー」とは何か?

ミステリーは興味関心を引っ張る。

これです。

順を追って解説する起承転結で話すやり方は


聞く姿勢ができている大人はいいが

飽きっぽい高校生には難しい。


(特に首都圏など大都市の学校)



「えっ~、それホント?」



というテーマをドンと打ち出し

その答えを3択にする。

体育館に事件を起こして

その謎解きに、生徒を指名するわけだ。



そして4。

謎解きには「モノ」が必要になる。

手元に資料を渡して手を使わせるといい。

手を使うことで脳の別の部分が働く。

これをしないと、


「耳」ばかり刺激することになり

脳が不活性化する。

私の講演は「目」「耳」「手」を刺激するように工夫してある。

手を使わせると発問も違ってくる。



「1番だと思う人手を上げてください」   ← クイズ解答用紙がないとき

「1番に○をつけた人手を上げてください」 ← クイズ解答用紙があるとき
 



「思う人」と発問した場合

(おれ思わないもんね…)と拒否する理由を与えてしまう。

しかし実際に○をつけてしまうと

手を上げねばならない理由になる。

人間は案外素直にできている。


だから私の仕事は


クイズの答えを相談する時間を作り




「ハイ、まわりと相談してください。同じ答えで構いません。


必ず1つに○をつけてください」




としつこくいって決断を迫ること。




5はそのお礼。

勇気を持って行動してくれたのでほめる。

一期一会になるだろう相手と


瞬時にコミュニケーションするにはこれしかない。




最後に6。

しゃべる側の情熱は聞く側の情熱の100倍くらい多い。

だから講演内容は削らねばならない。

むしろ少ないほうがいい。

終わった後食いつきがいいようだったら

そのときに補足すればいい。



以上がざっと思うことになる。


実はこの内容は


ある方から質問されて


そのときの思ったことをまとめたものだ。


結構、私信というものは書き易かったりして


短い時間でドカンとまとまるものだ。


それでこのブログに記録してみたのだ。




さらに追加として「お笑い」との関係をまとめよう。




うけるプレゼンとは「お笑い」と一緒ではないだろうか。

すなわち、



「フリ→ボケ→ツッコミ」



の3段構成だ。

面白い漫才は必ずこれでできている。



ダウンタウンでいえば

まず浜ちゃんが話題を「フリ」、

それに対して松ちゃんが「ボケ」る。

そこに浜ちゃんが「ツッコミ」をいれて完成。


3段構成。



まず話題を「フル」から

お客は「それでどうなる?」と興味関心を起こす。

それに対して松ちゃんが「ボケ」て笑いをとるが

すぐさま浜ちゃんがどついて「ツッコミ」、

そのお客の笑いを確定させる。



話のうまい人は一人でこれをしている。

私が今最も注目している人は青山繁晴さん。

ユーチューブで見れますのでぜひぜひご覧ください。



http://www.youtube.com/user/03aoyama



私にとって最高の先生です!

次の画面が出る前に必ず「フリ」があり

その画面をバンとだして「ボケ」、

その画面を読み上げ、


解説することが「ツッコミ」になっている。


すばらしい!

つねに次へ次へと見るものをいざなう、そのコンテンツと話術!

謎解きのようなプレゼン。




世界最高のプレゼンターといわれる


アップルコンピューターCEO、スティーブ・ジョブス。


彼のプレゼンは


次のことばで特徴付けられているらしい。




画面にことばが先行する




やっぱり


まず「フリ」があるのだ。


しかる後に新商品の画面が出る(「ボケ」)。


そして自らその新商品に「ツッコミ」を入れる。




そう理解してしまうと


お手本はいたるところにある。


最近はプレゼン方の番組も多い。


プレゼンターは必ず、




「その謎は…次の映像を見ればわかります」




などといっている。




これは


昔懐かしい紙芝居のおじさんも一緒だ。




「そのとき黄金バットは………(とひっぱって次の紙へ移る)」




前に紙芝居に興味が出て


(PowerPointはデジタル紙芝居だから)


さまざまな書籍をamazonで購入したことがある。


紙芝居の歴史も調べた。


絵を見ながら話を聞くのは


どうやら日本のカルチャーだ。


中世の絵巻物からはじまり、




絵解き(中世以降)


 ↓


地獄絵図


 ↓


のぞきからくり(江戸時代)


 ↓


写し絵(明治時代)


 ↓


トーキー


 ↓


紙芝居




必ず「絵」のそばには人がいた。


食い入るように絵を見つめる聴衆に対し


解説する人がいたのだ。




そして必ず


画面にことばが先行する。


つまりポイントは




接続することば




なのだ。


PowerPointでいえば


スライドとスライドの間をつなぐ接続詞。




私は新しいテーマでしゃべるとき


スライド間をつなぐ「接続のことば」をメモするようにしている。


コンテンツはいい。


しゃべれて当たり前。


問題はその前後にある。


それが


よいプレゼンと悪いプレゼンの違いとなる。